2022年5月の土地購入以来、ウッドショックをはじめ、シリコンショックや東欧有事などあらゆる要因で建築費用が上がってきている中での設計事務所・工務店探しは難航しています。

途中、タイニーハウスやトレーラーハウスに食指を動かしてみるもいまいち決定打に欠け、結局は通常住宅に戻ってくるなど、右往左往しているうちに7月を迎えました。

さて、今回は一度4月下旬にお声掛けさせていただいた北杜市にある山口工務店さんとの一回目のZoom会議です。当初ホンカのシリウスシリーズのカスタム間取り案を元に粗概算を出していただいていた工務店さんなんですが、リサーチしているとどうやら非常に評判が良いようです。

土地探しの際にお世話になった複数の不動産屋の方が「この辺りなら山口工務店さんが良いよ」とか「周りの知り合いの大工さんがあそこは良い家建ててると言っていて評判だよ」と教えてくれました。
無垢材と珪藻土塗り壁など、できる限り近隣産地の建材で完結するような家造りをポリシーとしている工務店で、OMソーラーという軒先から取り込んだ外気を屋根に当たる太陽熱で温め、その温められた空気を棟部分で取り込んで屋根裏から床下に強制送風させるエコな補助暖房換気システムを標準仕様としている点が特徴です。

それでいて建築本体工事費がお財布に優しめで、それで評判が良いとあらば是非じっくり検討したいところです。

前回いただいた粗概算は、傾斜地に対応するため背高の基礎を提案してきた他社の簡易図面を見てもらってこれと同じものを建てた場合はお幾ら?という概算の出し方をしてもらったため、結果として追加基礎費用が800万円と出てしまい一度トーンダウンした経緯があります。今回は自分たちで新たに考えた間取りを元に打ち合わせをすることになりました。
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光明が見えた!

さて打ち合わせ本番。東京・シンガポール・山梨の3拠点を繋げたZoom会議です。予め送っておいた説明資料に沿って進行します。

土地の購入を決めた背景、土地の特徴および周囲の環境の説明から入り、僕らが思い描いている間取りやサイズをじっくり説明させていただきました。

そして先方からはOMソーラーの仕組みと利点、そしてそれがいかに普段留守がちな別荘にとっても合理的か(後述)を丁寧にご説明いただきました。

Zoom会議用説明資料から

そして会議の中盤、先方から思いがけず嬉しい提案が。

会議に先立って事前に渡しておいた地盤調査結果資料(土地購入前に実施済み)を前もって基礎工事業者と共有して意見を聞いておいてくれたらしく、この地盤の強度であれば土地の売り主から融通してもらう予定の盛土(後述)で平らにして、そこに地盤改良を加えることで傾斜地でもベタ基礎で建設ができそうとのことでした。

おまけに費用もそちらのほうが安く上がるはずだということで、これは予想していなかった朗報です。元々聞いていた基礎費用800万円が圧縮されるのであれば、かなり現実味を帯びてきます。

しかもベタ基礎で施工できるということは傾斜のある南北方向に建物の長さがある程度あっても良いということになり間取りの自由度も一気に上がります。

この会議の後二人のテンションが一気にあがったのは言うまでもありません。いよいよ本格的にプランニングに進めるかもしれないという期待と興奮で、まるで家が上棟を迎えたかのような喜びでした。

OMソーラー

OMソーラーのしくみ

OMソーラーは全国100社以上の工務店が採用していて各社HPで説明しているので詳細はそちらに譲るとして、簡単に言うと補助暖房としては非常にエコで優秀な装置のようです。

もちろん太陽光をエネルギー源にするので天気の悪い日が続いたり冬の間ずっと屋根に雪が積もってしまう豪雪地域では効果が発揮できないかもしれないません。

またネット上の評判ではやれ枯れた技術だとかいうネガティブな意見も散見しますが、日照時間が長いエリアとして知られる北杜市、また標高が高くてもそこまで雪が積もらない八ヶ岳南麓では特に有効な装置だと思われます。なにやら真冬でも晴れた日なら軒部分の集熱温度は60℃になるというから侮れません。

僕らが気に入ったOMソーラーのメリットは以下の通りです
  • 室内温度と屋根内の空気の温度を常時監視して自動的に空気の流れを制御してくれる ⇨ つまり冬は積極的に熱を取り込み夏は排熱を促進する
  • 窓を締め切っていても年中室内に空気の流れが発生しさらに随時換気されるためカビが発生しにくい ⇨ 留守がちな別荘には最適な機能じゃないか
  • 循環モードにすると薪ストーブで温められて天井付近に上がった暖気を強制的に床下に送って熱を各部屋に再分配することができる ⇨ 薪ストーブから遠い場所にあるトイレや洗面室にも暖気を届けてくれるなんて素敵だ
  • 断熱を施した基礎部分に暖気を入れるので真冬でも床下が零度を下回らない ⇨ 冬季の水抜きが不要で床下の水道管を電熱コイルで巻かなくても良いのでエコ

このように、メインの暖房は薪ストーブと決めている僕らにとってOMソーラーは非常に機能面で親和性が高くエコで合理的なのです。

デメリットをあげるとすると室内の空気が乾燥するという点と屋根裏から床下に部屋を貫いて送風する直径30センチのダクトでしょうか。これを如何に目立たなくするかが唯一の課題かもしれません。なにはともあれ、この装置が標準工事に入っている点は非常にポイントが高いです。

盛土

僕らの草原別荘地にある土地は南東方向に8〜9度ほど傾斜しています。八ヶ岳南麓はほとんどの土地が南傾ですが、僕らの土地は「緩傾斜」よりはもう少し角度がある方でしょう。

そしてこの土地にフラットな基礎を置こうとすると、当然南側の基礎の立ち上がりが高くなってしまいます。

また、標高の高い場所では凍結深度が深く設定されるため、それも相まって必要とされる基礎高が高くなりおのずと基礎工事費も上がってしまいます。

あるいは、基礎を高くしたくない場合は地形に沿って段々畑のように基礎を造るやり方もあります。その上にのせる建物にはスキップフロアや半地下の間取りがあてがわれることが多いですね。ただし基礎の形状が複雑になるためやはり工事費が上がる傾向にあります。

一般的な住宅地では傾斜地が忌避されるのはこういった理由があるのですね。

ただ、ここは別荘地。傾斜しているからこそ南側の抜け感と開放感が得られます。そしてそのメリットを享受しつつ、それほど高くない基礎でフラットな部分を獲得する方法の一つに盛土があります。

当然盛土に関しては賛否両論あり、八ヶ岳周辺でヒアリングした設計事務所や工務店の中ではむしろ否定派が多かったです。否定派の言い分として「自然に抗って建ててはいけない」というソフト面を挙げる人がいれば、結局地盤改良に工費がかかるので、というハード面を理由に挙げる人も多かったです。

実は僕らの買った土地の売主が、急がないのであれば今後他の造成工事で出てくる土を無償で支給してくれると言っていて、もしそれを使って安く基礎を仕上げる方法があるのなら前向きに考えたいと思っていたのです。

もちろんL型擁壁などが必要なくらいの盛大な盛土なんてのは想定していません。危険だし、むしろ高くつくのはわかっています。僕らが想定しているのはあくまでも自然な法面を形成できる程度の盛土で、締め固めてしまえば有効な方法の一つであるのはわかっていました。

そして地盤改良を適切に施して安全に建設できるというのが本当なのであれば、渡りに船であるのは間違いありません。僕たちはその船に乗っかることにしたのでした。