さて、人気のない半分朽ち果てた別荘地から気を取り直して2日目最初のアポを取っている西麓の別荘地事務所へ向けて出発。

八ヶ岳高原ラインを西に向かい小淵沢の北で鉢巻道路に入ったらあとは一本道です。鉢巻道路に入ると道路が綺麗に整備されていて一気に高原道路の雰囲気が出てきて良い感じです。

途中富士見高原別荘地を突き抜けます。名前のとおり富士山が見える場所が多いのでしょう。たしかに地図で見ると富士山が見えるぎりぎりの八ヶ岳西麓といった感じで、これ以上北に回ってしまうと八ヶ岳で富士山が見えなくなってしまいます。

環境もすこぶる良いし大きな別荘地なので人気もあるんでしょうが、一つ残念なのは別荘地の大部分が土砂災害警戒区域(いわゆるイエローゾーン)に入ってしまっているのです。

地元の不動産屋さんは、『そんなこと気にしていたらどこにも別荘なんて建てられませんよ、ただ重要事項として記載義務があるだけ』と言うのですが、昨今の世界的な異常気象を考えると、やはりできるなら警戒しなくてもいい場所が良いですね。

さて、富士見別荘地から更に10分ほど鉢巻道路を北上したところにあるのが今回の目的地、八ヶ岳中央高原三井の森別荘地です。ここはKが八ヶ岳を意識し始めた最初の頃に考えていた別荘地で、その後ロックダウンのため長らく帰国できなかった時分から、ネットの情報を頼りにずっと妄想を繰り返してきた、ある意味思い入れの強い場所でした。

事務所に入ると早速スタッフの方が事前に指定しておいた区画の情報に加えていくつか条件に近いおすすめの区画の資料を準備してくれていました。

一軒ずつ案内してくれるのかと思いきや、『自由に見てきてください』とのこと。勝手に区画に立ち入っても良いらしい。というわけでお礼をして早速物件巡りへ。

別荘地内の道路は全て舗装されている

いただいた資料の区画に着くたびに車を下りて区画に入って歩き回って眺望を確認します。ほとんどの区画は結構な斜面です。

西麓の斜面にある別荘地なので基本的にどの区画も西傾斜、区画内の等高線によってはそこに更に北傾斜も入ってくるところもあります。うーん、どこも今ひとつだ。

Kが一番期待していた区画も写真では良さそうに見えていたのですが、現地で実際に見ると想像以上に北西方向に傾斜がキツくここに南向きに建てる建物のイメージが全く湧いてきません。

別荘地の区画を奥深くまで歩き回るK

僕たちはさらに別荘地の奥深く(山の上の方)へと車を進めます。すると次第に息苦しくなってきて、耳が詰まっているせいもあるのか全体がシーンと静まり返っています。

そう、この別荘地の上の方は標高が1,500mを超えるのです。その異質な空気も相まって別荘地の独特な雰囲気を醸し出しているのでした。

僕たちはこの別荘地で全部で5,6区画は見たでしょうか。しかしながら「これは!」と思える物件にはとうとう出会うことができませんでした。

ところで、別荘地を見学されたことがあれば気づかれると思いますが、売出し中の土地に立っている区画標識には現所有者の名前が入っています。つまり別荘地の土地を所有したものの長年建物の建築に至っていない土地ということです。

40〜50年ほど前の別荘ブームの時は都心のサラリーマンがこぞって別荘地を買い漁ったと聞きます。当然、当時は価格もつり上がったことでしょう。条件がさほど良くない土地だったとしても当時は別荘地を所有すること自体がステータスだったかもしれません。

そして一旦所有すると建物を建てていなくても別荘地なので施設維持管理費が毎年かかってきます。様々な理由で何度か所有者が変わってきたかもしれませんが、これら売出し中の区画票に記されている所有者の名前を見ては、その人の別荘地との出会いから売出しに至るまでの人生ストーリーが秘められているかと思うとちょっと胸アツな物件見学でした...。

ちなみに、この別荘地の北西方向には北アルプスが見えるようですが、全体的には「森の中」という印象で眺望がほしいKやTにとってはやや物足りない結果となりました。

所有者の名前が記されている区画標識

僕たちは別荘地をあとにし、小淵沢まで戻ってきました。午後のアポまであまり時間がないため、手近なところで小淵沢の道の駅のレストランに入ったのですが、メニューを見てびっくり。

ランチが2,000円するではないですか。さすが観光地です。実際、訪れている人たちも関東方面からの観光客や移住者が多いような印象です。

ランチの後、南麓をベースに不動産業をされている方と面会。いくつか土地の紹介をしていただきました。しかし、やはりどこもいまいちピンときません。

長年放置されたコンクリート管がむき出しになっている土地、隣が近すぎる土地、倉庫ビューの土地・・・ なるほど、良い土地は売れてしまったよと異口同音に聞いた意味をようやく理解した気がしました。百聞は一見に如かずなのです。

ウェブの情報はあくまでも土地の表情の一片しか表していない。その不動産会社の人が教えてくれました。本気で最高の土地を見つけるには、とにかく根気とそれから決断力が必要なのだと。

地元の不動産業者と長く付き合っていると、そのうち不動産業者が独自に仕入れる情報にあたることがあるのだとか。「あそこの土地がもうそろそろ売りに出されそうだ」「さっき売りに出されたのがあるけど、今日見に来られる?」そういった情報がもたらされた時にいかに迅速に駆けつけて即決できるかに掛かっているらしいです。

ちなみに僕たちが理解した「南麓の素晴らしい土地」というのはレインボーライン周辺に広がっている棚田用の農地で、視界を遮る保安林が周りに無いのでどこに立っても富士山と南アルプスの雄大な景色が飛び込んでくる土地です。

それはそれは素晴らしく、だだっ広いのでいくらでも空いている土地がありそうなものですが、不動産会社の人が言うには簡単に売り出せない理由がある(元は国が造成した棚田だからとか言っていた)ため滅多に売りものが出てこないらしいです。

この話を聞いて、余計に最初に見た草原別荘地の土地への熱い思いが高まるばかりでありました。

車から下りずに車窓から見学して終了する物件もしばしば